近年ではアスリートや高校生の部活動などで筋力トレーニングが導入されるようになってきました。
ボディビルや健康のために筋量を増やすことも最近の宅トレ、フィジークブームなどがあり注目されています。
しかし筋トレ自体を批判する人もいます。
そういった方々は口々に「ボディビルは見せ筋」とか「筋トレしても運動に活かせない」などとテンプレートのように言ってきます。
そういった批判にきちんとした理論でお返しできるようになりたくありませんか?
そこで今回取り上げるのが、筋量の増加がパフォーマンスにどう活きるのかまとめた論文を紹介します。
筋肉量の増加に向けた効果的なレジスタンス運動とたんぱく質摂取
NSCA JAPAN Volume 27, Number 10, pages 11-15
筋量を増やすべきか考えておきたいこと
筋量を増やすべきかはアスリートの場合、しっかりと考えたほうがいいでしょう。
一般人が健康目的で筋トレをする場合は増やせるだけ増やしたほうがいい。
このように私は、考えています。
というのは筋肉量を増やそうと努力しても簡単には増えないから一生懸命、筋トレしてください。という意味です。
筋トレをしていない初心者の場合は1年間で最大10kg程度増やすことが可能です。
これは食事から筋トレまで自己管理をしっかりと行った場合のみです。
週1~2回の筋トレでは、よくて3kg程度増量だと思います。
さらに2年目以降は筋肉量は増えにくくなり1kg~5kgとその人のDNA次第となります。
なので、3年目以降はさらに筋肉が増えにくくなっていくことは想像に難くないでしょう。
パーソナルトレーナーを雇ったり自分で勉強して効率よく筋トレを行っても、思うように筋肉量は増えないため、筋肉量は増やせるだけ増やしたほうがいいということになります。
アスリートの場合はどうなのか
どのような競技をやっているかによって筋肉が必要か決まってきます。
例えば、スプリント競技や野球など瞬発力を必要とする競技は必ず筋トレをしたほうがいいですよね。
反対に、長距離走などのマラソン競技は筋肉をつけすぎると身体が重くなって思うように動けなくなるかもしれません。
しかし、マラソン競技などでも走り続けるために必要な遅筋が優位になり、筋肉は削ぎ落とされていきます。
筋肉量が減りすぎて走るパフォーマンスが低下してしまうリスクもあるということで、筋トレをメニューに組み込んでいるマラソン選手もいます。
このように総合的なバランスを見て筋肉が必要かパフォーマンスを見極めつつ筋トレを行う必要があるということですね。
筋量と体重の増加がもたらすメリット
筋肉が増えることによって得られるメリットが2つ紹介されています。
増えることでどういった場面で活きてくるかなども参考になればと思います。
1.筋肉が大きければ大きいほど力も強くなる
アームレスラーなどは太い腕をしていますよね。
これは筋肉を増やせば増やすほどパワーが増えるからです。
筋肉の質量が増えれば増えるほど動かしにくくなることもあります。
例としてバスケットボール選手やアメフト選手は体重が重く、タックルなどを食らっても吹っ飛びにくいですよね。
体重が重いことによるディフェンス能力が高まるのでパフォーマンスの向上に繋がっているということになります。
また、ボクシングではパンチが一番重いのはヘビー級の選手です。
体重が重く瞬発力に優れた筋肉の選手ほど切れ味は鋭くなります。
アスリートでなくても一般生活においては、地震や電車の揺れなどに対応しやすくなるのは筋肉量が関係してたりします。
歳をとっていくとバランス能力が低下してくるのは、筋肉量の減少が原因だったりもします。
2.運動量の増加・消費カロリーの増大
筋肉は身体を維持するために多くのカロリーを必要とします。
例えば筋肉量が10kg違う人が、マラソン10kgを一緒に走ったとすると10kg筋肉量が多い人のほうが多くのカロリーを消費します。
つまり筋肉が増えることで痩せやすくなったり、多量の食事をとることが出来るので食事量が多い人にとってメリットが大きいでしょう。
さらにアスリートの場合は、筋量が増えつつスプリント速度が落ちない場合に限り、タックルなどのコンタクトスポーツでは打ち負けにくくなるという結果が出ているようです。
Burd, N.A., A.M. Holwerda, K.C. Selby, D.W.
West, A.W. Staples, N.E. Cain, J.G. Cashaback,
J.R. Potvin, S.K. Baker, S.M. Phillips. Resistance
exercise volume affects myofibrillar protein
synthesis and anabolic signalling molecule
phosphorylation in young men.
J Physiol .588(Pt 16): 3119-30. 2010
筋量と体重の増加がもたらすデメリット
一般的な生活やアスリート競技におけるメリットを説明してきましたが、もちろんデメリットもあります。そのデメリットについて紹介します。
方向転換や加速・瞬発力を必要とする場合
単純に筋量を増やしただけでは競技シーンでは活躍できません。
それにはボディビルダーのような重い物を持ち上げるという能力だけではなく、瞬発力(パワー)が必要になってきます。
パワーと筋量がバランスよく発達すれば、もちろん加速力などは落ちませんがいたずらに筋肉量が増えてしまうとパフォーマンスの低下が起きます。
そこにはパワーが必要だからです。
よくプロ野球選手などがウェイトトレーニングをして成績不振に陥ったなど耳にしたことがあると思います。
これは筋肉量と自分の持っているパワーの不均一によりパフォーマンスが低下したからと考える事もできます。
パフォーマンスを損なわないために瞬発力を鍛えるトレーニングだったり、体脂肪がつかないような食事のコントロールが大事です。
マラソン選手なども筋肉量を増やしても構わないのですが、その筋肉量に見合った最大酸素摂取量が必要なので、いたずらに増やしてもパフォーマンスが低下するだけになります。
さらに紹介されているのは、スプリンターなどは年齢と地面反力についても言及されています。
体重が増加することによって身体にかかる負担が大きくなります。
負担の蓄積によってオーバーユーズ障害のリスクが高まることが懸念されるようです。
なので標準体重の人は問題ないと思いますが、肥満気味の方はプールやサイクリングマシンなどで、下半身に負荷のかかりにくい有酸素運動がおすすめします。
見せ筋と実用的な筋肉の違いとは
ボディビルダーとパワーリフターの筋肉量とパワーを比較した研究結果がまとめられています。
そこには、ボディビルダーのほうが大腿筋断面積がパワーリフティング、ウェイトリフティング選手に比べて太いということが明らかにされています。
さらにリフティング選手のほうがより高重量を扱えることも言及されています。
これは、筋肉の問題と神経に違いがあるようです。
リフティング選手はボディビルダーに比べて高重量を扱って、1回持ち上げられればいいという考えでパワーを鍛えます。
この高重量が神経系の発達に重要であります。
神経が発達することによって、一本一本の筋肉をフル動員して動かすことが出来るとともに、全身の連動性が高まるのです。
効率よく持ち上げるために身体が、動きに適応しようとすることで神経系の発達が促されます。
対してボディビルダーは筋肉を発達させるために、特定の筋肉に効かせるということが重要視されます。
例えば、ベンチプレスを行っても大胸筋だけ効かせたいので、大胸筋だけで持ち上げるイメージを持って取り組みます。
この違いによって神経系の適応力が変わってくるのではないかと思います。
なので、いわゆる見せ筋ではなく実用的な肉体を作り上げるためには高重量低回数の全身連動性を必要とする筋力トレーニングが最適ということではないでしょうか。
もちろん、見せ筋でも鍛えれば鍛えるほど神経系は発達していきます。
トレーニングをすればするほど運動パフォーマンスは向上するので、見せ筋が実用的ではないかというと実用的です。
筋トレを否定している人に比べたら断然実用的な筋肉へと成長していきます。
まとめ
筋肉量とパワーのメリット・デメリット、実用的な筋肉という面で本論文を紹介しました。
主にアスリートの方に実用的な論文となっていますが、一般的にトレーニングをしている人も趣味でスポーツをしている人にとっても有益な内容となっています。
大事なことは筋量が増えるにつれて瞬発力が伴わないとパフォーマンスが低下してしまうという点と、自分にとって筋肉が増えるメリット・デメリットについて考えていただきたいと思います。
冒頭でも伝えましたが、健康維持が目的であれば筋肉量を増やすことだけ考えていただきたいなと思います。
どう頑張っても筋肉量は簡単には増えません。(すぐ筋肉ついちゃうんだ~とかくだらないです)
がむしゃらに筋トレをやらずに緩くゆっくりと長い目で筋トレを頑張ってほしいと思います。